レンダリング計算時間の短縮
最も効果的な方法は、高速なコンピュータを使用することです。端的には、浮動小数点演算を高速に処理できるコンピュータということです。一般的には、できるだけ高価で、新しく、駆動周波数の高いCPUを搭載したコンピュータといえるかもしれません。メモリも十分に搭載されている必要があります。物理的に搭載されているメモリが不足すると、OSは仮想メモリと呼ばれる機能を使用します。これは、CPUの処理速度に比較すると非常に低速なハードディスクの一部の領域を高速なメモリの代わりに使用するという機能です。この、仮想メモリを使用してのレンダリングは、実用的ではありません。常に仮想メモリを使用しているような場合は、メモリの増設を強くお勧めします。
なお、グラフィックボードは、図形ウインドウの描画処理には効果を発揮しますが、レンダリングの高速化にはほとんど影響しません。
以下に、ソフトウエア的にレンダリング時間の短縮に効果があるかもしれないことをいくつか挙げておきます。もちろん、この場合、イメージの品質とレンダリング時間はトレードオフの関係です。
◆CPUの負荷を軽減する
- すべての設定について、できるだけ初期状態の設定を使うようにします。
- レンダリング手法では、パストレーシングをレイトレーシングに、レイトレーシングをレイトレーシング(ドラフト)に変更します。パストレーシングは、レイトレーシングと比較すると、数倍の時間が必要です。
- レンダリング設定のアンチエリアシング、視線の追跡レベル、レイトレーシングの画質を不必要に高くしないようにします。
- 表面材質設定では、「反射」「透明」「屈折」「荒さ」「ボリューム設定」およびソリッドテクスチャーの「乱れ」はできるだけ使用しないようにします。
- 光源設定では、光源、特に無限遠光源以外の光源を多数使用しないようにします。また、メイン以外の光源の「影」を0にします。「影」を0にすることは、CPU負荷の軽減に非常に有効です。
- 背景設定では、反射や透明などで背景を形状に反映させない場合は、合成やバックドロップを行うようにします。
- アンチエリアシングを使用する代わりに、大きなサイズでレンダリングしたイメージを画像処理ソフトウエアで縮小した方が、時間を短縮できることもあります。
- アニメーションのレンダリングでは、アンチエリアシングを使用しないか、低い品質に設定します。
◆メモリの負荷を軽減する
- 「面の分割」の精度を下げるようにします。分割精度が1段階違うと、メモリの使用量に約4倍の差が発生します。例えば、「粗い」と「最も細かい」では、64倍の差があります。
レンダリング設定で、全体の形状の分割精度を下げ、曲面を重視したい形状の名前の先頭に“<”記号(曲面分割記号)を付けることで、必要な部分だけの分割精度を上げることが効果的です。
ディスプレイスメントマッピングを使用している場合も、分割数を下げてください。 - 球、回転体はできるだけ自由曲面に変換しないようにします。多数の球などを使用する場合、相当の違いがあります。
- 不要なパートを大量に作成しないようにします。
- イメージマッピングでは、無意味に大きなイメージを使用しない、同じイメージを使用するイメージがある場合は、それらをパートに含め、パートに対してイメージマッピングを行う、同じパートに含むことができない場合は、マスターサーフェスを使用するようにします。
- レンダリングするイメージのサイズを小さくするようにします。
- 他のソフトウエアを終了させるようにします。