マルチパスレンダリング
マルチパスレンダリングは、レンダリング時に設定されている「拡散反射」、「影」、「間接光」などの要素(パス)について計算し、その結果を個別のイメージとして保持することが可能です。
重要Basicで利用できるパスは、「透明度」と「Z値」のみです。
それぞれのイメージは、用途に応じて、すべてのパスをレイヤー(マルチレイヤー)として、1つのファイルに保存することや、すべてのパスを個別の(複数の)ファイルとして保存することができ、編集ツールでの後処理を効果的に行うことができます。
マルチレイヤーで保存可能なファイル形式は、OpenEXR(.exr)/Photoshop(.psd)/TIFF(.tif)/EPix(.epx)となります。個別ファイルとしての保存はShade3Dで保存可能な全ての画像ファイル形式で可能です。
重要Photoshop形式での保存は、ProfessionalとStandardに搭載されています。EPix形式での画像保存は、Professionalにのみ搭載されている機能です。
マルチパスレンダリングは、アニメーションレンダリングやトゥーンレンダラにも対応しています。
重要トゥーンレンダラは、セルアニメや漫画のトーンによる陰影の表現などのような、ノンフォトリアリスティックなレンダリングを行うことができるプラグインで、ProfessionalとStandardに搭載されています。
●マルチパスレンダリングの設定方法
マルチパスレンダリングの設定は、基本的にレンダリングオプションの「マルチパス」タブを選択すると表示される設定項目より行います。
◆保持するマルチパスを選択する
まず、マルチパスレンダリングを有効とするために、レンダリングオプションの「マルチパス」タブより、「マルチパスを保持する」チェックボックスをオンにします。
「マルチパスを保持する」チェックボックスをオンにすると、現在のシーン内で有効なパスがアクティブになり、チェックボックスによって、パスを保持するかを選択することが可能となります。
注意現在のシーン内に情報がないパスについては、「マルチパスを保持する」チェックボックスをオンにしてもアクティブな状態とはなりません。
用途に応じて、保持したいパスを選択します。選択されたパスによって、マルチパスレンダリングに関する情報がウインドウ左下に表示されます。多くのパスを選択するとレンダリング実行時に非常に多くのメモリが必要となる場合がありますので、特に「合計サイズ」の情報に注意して、必要なパスを選択してください。
また、パスを選択する際には、[Ctrl]キー (Windows)|[command]キー (macOS) を押しながらクリックすると、複数選択することが可能です。また、[Shift]キーを押しながらクリックすると、範囲選択を行うこともできます。まとめて複数のパスをチェックするときに使用すると便利です。
◆レンダリングを実行する
レンダリングを実行すると、「マルチパス」タブで設定したパスを保持した計算結果を得ることができます。
ただし、アニメーションレンダリングを実行する場合は、実行時に用途に応じて、「レンダリング」メニューの「アニメーションレンダリング マルチレイヤー」/「アニメーションレンダリング マルチレイヤー(個別ファイル)」のどちらかを選択する形となります。
アニメーションレンダリングを実行した場合、その結果は連番画像として出力されます。
◆パスごとのレンダリング結果の確認
レンダリングにより生成された各パスの画像は、イメージウインドウの「チャンネル」ポップアップメニューに表示され、それを選択することで、それぞれのパスについてのレンダリング結果を確認することができます。
◆レンダリング結果を保存する
マルチパスの設定を行ってレンダリングした画像も通常のレンダリング画像と同様に保存することができます。レンダリングウインドウの「保存」ボタンをクリックすると表示されるメニューから「保存」を選択すると、現在イメージウインドウに表示されている画像を任意の形式で保存することができます。イメージウインドウの「チャンネル」ポップアップメニューでパスごとに表示を切り替えることもできますので、目的に応じてご利用ください。
また、「マルチレイヤー」/「マルチレイヤー(個別ファイル)」を選択すると、そのイメージに存在する全てのパスを一括して保存することができます。「マルチレイヤー」を選択すると、すべてのパスをレイヤーとして、1つのファイルに保存することができます。対応しているファイル形式は、OpenEXR(.exr)/Photoshop(.psd)/TIFF(.tif)/EPix(.epx)となります。「マルチレイヤー(個別ファイル)」を選択するとすべてのパスを個別の(複数の)ファイルとして保存することができます。
重要EPix形式での画像保存は、Professionalにのみ搭載されている機能です。
●パスの種類と内容
マルチパスレンダリングで設定することのできるパスには以下のような種類があります。ここでは、それぞれの要素についての概要を説明します。
注意それぞれのパスのイメージが持つ色深度はレンダリングオプションの「イメージ」タブ内にある「ピクセル深度」ポップアップメニューの設定に応じて、一部のパスを除き、8-bit / 16-bit / 32-bit となります。
<カラーパス>
すべてのカラーパスを下記の順序で、それぞれのパスに記載された合成手法により合成することで完全なレンダリング結果を得ることができます。
◆フォグ
無限遠光源ウインドウのフォグのパスを生成します。フォグの濃度はアルファチャンネルに保持されます。フォグ以外のカラーパスのすべての合成結果に対してアルファ合成をすることで適用結果を得ることができます。
◆ボリュームライト
ボリュームライトのパスを生成します。加算合成(覆い焼き(リニア)-加算)をすることで適用結果を得ることができます。
◆コースティクス
フォトンマップのコースティクスのパスを生成します。加算合成(覆い焼き(リニア)-加算)をすることで適用結果を得ることができます。
◆大域照明
大域照明(パストレーシング / フォトンマップ / ラジオシティ)のパスを生成します。パストレーシング、フォトンマップでは間接光とIBLの成分のみ、ラジオシティでは「エネルギー」ポップアップメニューで選択した成分が含まれます。加算合成(覆い焼き(リニア)-加算)をすることで適用結果を得ることができます。
◆反射
表面材質の反射のパスを生成します。パスには1次レイにおける反射のみが含まれます。加算合成(覆い焼き(リニア)-加算)をすることで適用結果を得ることができます。
◆透明
表面材質の透明のパスを生成します。パスには1次レイにおける透明のみが含まれます。加算合成(覆い焼き(リニア)-加算)をすることで適用結果を得ることができます。
◆環境マップ
表面材質のメタリックとマッピング設定の「環境」を合成したパスを生成します。加算合成(覆い焼き(リニア)-加算)をすることで適用結果を得ることができます。
◆発光
表面材質の発光のパスを生成します。加算合成(覆い焼き(リニア)-加算)をすることで適用結果を得ることができます。
◆環境光
無限遠光源の環境光のパスを生成します。加算合成(覆い焼き(リニア)-加算)をすることで適用結果を得ることができます。
◆影
影のみのパスを生成します。光沢、拡散反射、背景の合成結果に対して乗算合成をすることで適用結果を得ることができます。
注意大域照明による影は反映されません。
◆光沢
表面材質の光沢1と光沢2のパスを生成します。パスは影を受けない状態で生成されます。加算合成(覆い焼き(リニア)-加算)をすることで適用結果を得ることができます。
◆拡散反射
表面材質の拡散反射のパスを生成します。パスは影を受けない状態で生成されます。また、無限遠光源、形状光源による直接光のみが反映されます。加算合成(覆い焼き(リニア)-加算)をすることで適用結果を得ることができます。
◆背景
シーンに設定された背景のパスを生成します。加算合成(覆い焼き(リニア)-加算)をすることで適用結果を得ることができます。
<データパス>
◆エフェクタ処理前
エフェクタの設定や色補正ウインドウの設定を処理する前のイメージを保持します。
◆座標値
対象となるシーンのグローバル座標の情報をイメージとして生成します。座標値はシーン全体のバウンディングボックスの長辺の長さを1.0として、X, Y, Zの各軸の値がR, G, Bの各要素に0.0 - 1.0の範囲で正規化されます。なお、スクリプトで色を取得した場合は正規化されず、ワールド座標値が直接得られます。
◆XY法線
カメラの向きを基準とした法線の情報をイメージとして生成します。0.5を原点として、X, Y, Zの各軸の値がR, G, Bの各要素に0.0 - 1.0の範囲で正規化されます。なお、スクリプトで色を取得した場合は、法線ベクトルが直接得られます。
◆法線
グローバル座標を基準とした法線の情報をイメージとして生成します。0.5を原点として、X, Y, Zの各軸の値がR, G, Bの各要素に0.0 - 1.0の範囲で正規化されます。なお、スクリプトで色を取得した場合は、法線ベクトルが直接得られます。
◆UV座標(UV1)
対象となるシーンに存在する形状のUV座標(距離補正)の情報をイメージとして生成します。イメージをラップマッピングした形状のみが反映されます。
◆UV座標(UV2)
対象となるシーンに存在する形状のUV座標(UV)の情報をイメージとして生成します。イメージをラップマッピングした形状のみが反映されます。
◆光源:拡散反射
対象となるシーンに存在する光源(無限遠光源、形状光源)の拡散反射の情報を要素としてイメージを生成します。すべての形状の表面材質を削除して、光沢を0.0にしたレンダリング結果から、大域照明の成分を除いた結果と同じイメージとなります。
◆光源:光沢
対象となるシーンに存在する光源(無限遠光源、形状光源)の光沢の情報を要素としてイメージを生成します。すべての形状の表面材質を削除して、拡散反射を0.0にしたレンダリング結果、大域照明の成分を除いた結果と同じイメージとなります。
◆光源:大域照明
大域照明(パストレーシング / フォトンマップ / ラジオシティ)のパスを生成します。パストレーシング、フォトンマップでは間接光、IBL、コースティクスの成分のみ、ラジオシティでは「エネルギー」ポップアップメニューで選択した成分が含まれます。すべての形状の表面材質を削除したレンダリング結果から、無限遠光源、形状光源による直接光成分を除いた結果と同じイメージとなります。
◆表面材質:拡散反射
形状に設定された表面材質の拡散反射色の情報を要素としてイメージを生成します。シェーディング計算を行わない拡散反射色が要素となります。
◆大域照明:サンプル点
イラディアンスキャッシュのサンプル点の配置状態を示すパスを生成します。これを利用することで、各設定の効果を分かりやすく確認することができます。
レンダリングの進行状況によって、表示内容が異なります。レンダリング開始直後の「イラディアンスキャッシュ生成フェーズ」では、赤い点でキャッシュを生成した箇所を表示します。イラディアンスキャッシュ生成後の「プログレッシブフェーズ」では、黄色い点でキャッシュが見つかった箇所、赤い点でキャッシュを追加生成した箇所を表示します。細部強調が行われた箇所は点の色が紫色に近くなります。
◆透明度
対象となるシーンに存在する形状の透明度の情報の有無をイメージとして生成します。生成されるイメージはレンダリングオプションの「その他」タブにある「透明度を描画」チェックボックスをオンにして、レンダリングを実行したときと同じイメージとなります。
◆Z値
対象となるシーンの1次レイまでのカメラからの距離をイメージとして生成します。距離をそのまま反映する形となり、レンダリングオプションの「マルチパス」タブ内にある「Z値」グループの設定によって、イメージの保持する情報は異なります。なお、スクリプトで取得した場合は、実寸値で得られます。
◆Z値(n次レイ)
対象となるシーンの反射や透明体を反映したカメラからの距離をイメージとして生成します。距離をそのまま反映する形となり、レンダリングオプションの「マルチパス」タブ内にある「Z値」グループの設定によって、イメージの保持する情報は異なります。なお、スクリプトで取得した場合は、実寸値で得られます。
◆形状ID
対象となるシーンに存在する形状ごとに色分けしたイメージを生成します。
◆表面材質ID
対象となるシーンに存在する形状に設定された表面材質ごとに色分けしたイメージを生成します。
◆マーカー色
対象となるシーンでブラウザによってマーカーの設定を行っている場合、マーカーに設定した色ごとに形状を色分けしたイメージを生成します。
◆マスク
ブラウザの「マルチパスレンダリング:マスク」チェックボックスを設定することで、任意の形状、表面材質の切り抜くためのマスクを作成することができます。
◆形状マスク
レンダリング結果から任意の形状を切り抜くためのマスクを生成します。ブラウザの「マルチパスレンダリング: マスク」チェックボックスをオンにした形状がリスト表示されます。
上の3枚の画像は形状マスクの利用例です。他の要素の影響を受けることなく、形状ごとにマスクを作成することができます。
◆表面材質マスク
レンダリング結果から任意のマスターサーフェスが適用された形状を切り抜くためのマスクを生成します。ブラウザの「マルチパスレンダリング: マスク」チェックボックスをオンにしたマスターサーフェスがリスト表示されます。
注意マスターサーフェスに対して「マルチパスレンダリング: マスク」をオンにした場合は表面材質マスク、それ以外の形状に対してオンにした場合は形状マスクとなります。
(表面材質マスク使用例)
◆カスタムパス
プラグインレンダラが独自の要素を持っている場合、対応するパスがリスト表示されます。現在は、トゥーンレンダラがマルチパスレンダリングに対応しており、レンダリング手法でトゥーンレンダラを選択している場合にカスタムパスが表示されます。