ラジオシティを使用する場合の注意
●ブーリアンレンダリングについて
ラジオシティ計算は、ブーリアンレンダリングに対応していません。
●メモリ不足になった場合について
ラジオシティ計算中にメモリ不足になったときは、「ラジオシティ」ウインドウの「削除」ボタンをクリックして、メモリを解放する必要があります。
●形状作成について
ラジオシティ計算させる形状を作成するときには、いくつか注意しなければならない点があります。ここでは、実際に形状を作成しながら、注意すべき点について見て行きましょう
◆形状を交差させないようにする
- ShadeExplorer から「プリセット」の「ドキュメント-サンプル」にある「Radiosity」に収録されている「duplication.shd」を開きます。
2つの形状が交差しています。この形状を通常の方法でレンダリングしても問題は起きません。
では、ラジオシティ計算を行ってみましょう。 - 「表示」メニューから「ラジオシティ」を選択して、「ラジオシティ」ウインドウを表示させます。次に、「開始」ボタンを押します。
- 「ラジオシティ」ウインドウのラジオシティ設定表示/非表示切り替えボタンをクリックして、ラジオシティ設定を表示し、「表示」タブを選択します。
表示される設定項目から、「メッシュ」チェックボックスのチェックをはずします。
2つの形状が交差するところに影漏れ(シャドーリーク)、光漏れ(ライトリーク)が発生しています。
原因は、形状が交差する位置がメッシュの中間にあることです。
ラジオシティ計算では、メッシュの頂点の明るさを求めて、隣り合う頂点でスムースシェーディングを行います。
今回の場合、縦の形状の手前の頂点には光が当たっているのに次の頂点は影になっているので、この2点でスムースシェーディングを行うと、交差する手前に影漏れがおこります。同様に、縦形状の下側は完全に影になるはずが光漏れを起こしています。
影漏れ、光漏れを解消するための方法は2つあります。 1つはラジオシティ計算の「最小間隔」を小さく設定する方法、もう1つは形状を交差しないようにモデリングする方法です。 - それでは、最初に「最小間隔」を小さく設定してみましょう。
ラジオシティ設定の「計算」タブをクリックし、「最小間隔」テキストボックスに数値を入力することで、最小メッシュ間隔を設定することができます。 今回は「10」と入力します。
「最小間隔」に入れる数値は、「初期間隔」の値と5倍から10倍離れていることと、割り切れる数値であることが大切です。
それでは、「開始」ボタンをクリックし、ラジオシティ計算を行ってみましょう。
メッシュが細かくなりました。
ラジオシティ設定の「表示」タブから「メッシュ」チェックボックスをオフにして見てみると、影漏れは少なくなりましたが、まだ少し残っています。メッシュを小さくしたことによって、頂点の間が近くなって影漏れを抑えることができます。しかし、この方法を膨大な部品がある建築パースなどで行うと、メモリの消費量が大きくなって、計算時間がより長くかかってしまいます。シーンに応じて、設定を使い分けるようにしましょう。 - それでは、次に形状を交差しないようにモデリングする方法を見てみましょう。モデリングを開始する前に、ラジオシティ設定の「計算」タブから「最小間隔」の値を150に戻しておきます。
- 最初に、違いを分かりやすくするために、交差する形状をすぐ隣に複製します。ツールボックスの「作成」タブの「複製」ボタンをクリックし、表示されたツールから「直線移動」ツールを選択して、上面図で下(手前)方向へ少しだけドラッグし、形状を複製します。
- 複製した2つの形状を選択し、同位置に複製します。
「直線移動」ツールを選択して、図形ウインドウ上でクリックしましょう。同位置に複製すると、縦横の形状が同じ位置に2枚重なった状態になります。
- 横の形状である閉じた線形状のコントロールポイントを表示します。右の2つのコントロールポイントを2つ選択し、縦の形状と交差する位置まで右に移動させます。このときオブジェクトスナップをオンにしておくと、位置を揃えやすくなります。
- 同じように横の形状の左側も縦の形状と交差する位置まで右に移動させます。
これで2つの形状で一枚の板が完成しました。 - 同様に縦の形状も編集しましょう。横の形状と交差する位置までコントロールポイントを移動させます。
- 「ラジオシティ」ウインドウの「開始」ボタンをクリックして、ラジオシティ計算を行ってみましょう。
ラジオシティ設定の「表示」タブから「メッシュ」チェックボックスをオフにして見てみると、影漏れも光漏れもなくなったことが確認できます。
メッシュは形状の端から始まります。そのため、交差する位置で形状が始まっていればメッシュが中間に入ることはなく、影漏れも光漏れも発生しなくなるのです。
このように形状をきちんとモデリングしておけば、粗いパラメータでも美しい結果を短時間に得ることができます。
◆同じ位置に面を重ねないようにする
- ShadeExplorer から「プリセット」の「ドキュメント-サンプル」にある「Radiosity」に収録されている「intersection.shd」を開きます。
ファイルを開くと、3枚の横板と10枚の縦板の形状が格子状になっています。
- ラジオシティ計算を実行して、結果を確認してみましょう。
黒くなっている面と影漏れが発生している箇所があります。
面が反転している形状はありませんが、形状を確認すると縦の板と横の板が重なっています。同位置に面が重なっている場合、黒くなるか、真っ白になるか、コンバージェンスの値が0%に近づいた後、また100%に戻るといった現象が起こります。
- それでは、この形状の修正を行ってみましょう。
まず、横の板の形状が入っているパートをブラウザで選択します。
- ツールパラメータから「ポリゴンメッシュに変換」をクリックし、表示されるダイアログボックスでOKしてパートを1つのポリゴンメッシュに変換します。
ポリゴンメッシュに変換 - 同様に縦の板が入っているバートもポリゴンメッシュに変換します。
- 「ツールボックス」の「編集」ー「共通」から「ブール演算」を選択します
- 演算の対象となる横の板のポリゴンメッシュを選択します。
- ツールパラメータより左から2つめの「融合」をクリックして、2つのポリゴンメッシュを融合します。このとき重なっている面は除去されます。
融合を確認したら「適用」をクリックしてブール演算モードを終了します。
- 以上で同じ位置に面が重なっていない形状への修正は完了です。
ラジオシティ計算を実行して、結果を確認してみましょう。
黒くなっていた面や影漏れもなくなり、正常な計算結果を得ることができました。 - 影が段差になっている部分は「メッシュ間隔」の「初期間隔」を100に、「最小間隔」を10にすることで改善できます。
◆面積が0の形状を作成してはいけない
面の部分がない線のみになっている閉じた線形状などがある場合には、ラジオシティ計算が正常に行われません。
必ず面積が0の形状が作成されないよう、形状の変換を行いましょう。